伊藤言の研究・教育活動について
2018/06/02 by Gen

心理学と省エネ行動関連の先行研究 [随時更新]

[Last Update 2018/08/07]

現在私は研究員として所属する株式会社イデアラボを通じて,株式会社デロイトトーマツコンサルティング,電力中央研究所,環境省などと省エネを促す仕掛けを構築する研究を心理学者の立場で行っています。そこで,【心理学と省エネ行動関連の先行研究】を私の研究関心からまとめていきます。特に,日本人の道徳基盤(Moral Foundation; Graham et al., 2010)に関するデータを1万人規模の調査で取得したので,【道徳性や政治的イデオロギーと省エネ行動の関連】を中心に先行研究のサーベイを随時行っていきます。

 

【道徳基盤理論(Moral Foundation Theory)と環境関連行動】

道徳基盤理論についての注釈:人の味の好みが,誰もが持つ「甘み・苦み・塩み・酸っぱさ・うまみ」の5つの基盤で重視するものの重み付けのちがいで決まるように,道徳的な態度の個人差は,誰もが持つ5つの道徳的基盤で何をどれだけ重視するかで決まるとする。5つの道徳基盤とは,Harm基盤=他者を傷つけること・弱者を守ることへの敏感さ。Fairness基盤=返報性,公正さを保つことへの敏感さ。Ingroup基盤=集団の和を守り集団の紐帯を守ることへの敏感さ。Authority基盤=集団の上下関係や秩序を保つことへの敏感さ。Purity基盤=気持ち悪いことや汚らわしいことを避け,聖なる価値を守ることへの敏感さ。(こちらの原稿の問題と目的も参考にしてください

 

  • Vainio, A., & Mäkiniemi, J.-P. (2016). How Are Moral Foundations Associated with Climate-Friendly Consumption? Journal of Agricultural and Environmental Ethics, 29, 265-283. (Study 1)
    • 調査対象者:フィンランド国籍の大学生272名
    • 個人の権利を守ることを道徳的に重視するIndividualizing foundations (Harm基盤,Fairness基盤)が高い人は気候変動(環境)により配慮した態度を持つ。集団の紐帯と秩序を守ることを道徳的に重視するBinding foundations(Ingroup基盤,Authority基盤,Purity基盤)が高い人は気候変動(環境)により配慮しない態度を持つ。 政治的な態度が気候変動(環境)に対する態度に与える影響は,道徳基盤を統制した後では消失する
  • Jansson, J., & Dorrepaal, E. (2015). Personal Norms for Dealing with Climate Change: Results from a Survey Using Moral Foundations Theory. Sustainable Development, 23, 381-395.
    • 調査対象者:スウェーデン国籍の一般サンプル1086名
    • individualizing foundations (Harm基盤,Fairness基盤)が高い人は気候変動(環境)により配慮した態度を持つ。Binding foundationsの中でAuthority基盤が高い人は気候変動(環境)により配慮しない態度を持つ。Dawson and Tyson (2012) ではIngroup基盤が気候変動(環境)により配慮しない態度をもたらすとしていたが,その関連は見られなかった
  • Dawson, Sharon & Tyson, Graham (2012). Will Morality or Political Ideology Determine Attitudes to Climate Change?. Australian Psychology Society, Melbourne
    • 調査対象者:オーストラリア国籍の487人(18歳~86歳)
    • Harm基盤とFairness基盤が高いほど気候変動に対して強い関心を持つ。Ingroup基盤が高いほど気候変動に対して関心を持たない。これらの関係は部分的に政治への親和性によって説明される。
  • Feinberg, M., & Willer, R. (2013). The Moral Roots of Environmental Attitudes. Psychological Science, 24, 56-62.
    • 保守ではなくリベラルは,環境問題を道徳の言葉でフレーミングする (Study 1a, 1b)
    • メディアのことばを分析すると,環境問題に関する社会的な言説はHarm/Care基盤によるものである場合が多い(例:動物が傷つけられる・地球を守ろう)。ゆえに保守ではなくリベラルが環境問題に敏感に反応する(Study2a, 2b)
    • 環境問題に関する社会的な言説をPurity基盤によるものに変えると(例:地球が穢される・聖なる地球を守ろう),保守よりリベラルの方が環境問題に関心を持つというギャップが消失し,リベラルと保守の双方が環境問題に関心を持つ(Study 3)
  • Dickinson, J. L., McLeod, P., Bloomfield, R., & Allred, S. (2016). Which Moral Foundations Predict Willingness to Make Lifestyle Changes to Avert Climate Change in the USA? PLoS One, 11, e0163852.
    • 調査対象者:アメリカのthe Cornell National Social Survey参加者(2014年,1000人,電話)
    • 結果:Harm基盤,Fairness基盤,(効果は小さくなるが)Purity基盤が高い人ほど気候変動を防ぐために二酸化炭素排出量を減らすよう生活スタイルを変えても良いと回答。この結果は,政治的イデオロギー,性別,年齢,気候変動という現象が実際に起きているか否かについての信念を統計的にコントロールした後のもの。
  • Severson, A. W., & Coleman, E. A. (2015). Moral Frames and Climate Change Policy Attitudes. Social Science Quarterly, 96, 1277-1290.
    • 参加者:360名の米国国籍者(Mturk)。1条件約50名
    • 方法:どのような言説のフレーミングをすれば,気候変動に関する政策の支持を変えられるかどうかをシナリオ実験で検討。
    • 結果:政治的イデオロギーが保守の人に効くとされてきた「宗教的道徳性(神の創造物を穢すこと)を強調したフレーミング」「経済的効率性(米国にとっての気候変動のコストベネフィット)を強調したフレーミング」は,保守の人に対してすら効かなかった(気候変動に関する態度を変化させなかった)。「科学を強調したフレーミング」「世俗的道徳性(将来や聖なるものへの責任)を強調したフレーミング」「経済的公正さを強調した(気候変動のコストベネフィットが不平等に降りかかるという)フレーミング」は気候変動への支持を増加させる効果があった。さらに,「科学フレーミング」と「経済的公正さフレーミング」は,気候変動に関する政策におけるイデオロギー対立を和らげる効果があった。
  • Trayner, G. (2017). Why values matter – how public relations professionals can draw on moral foundations theory. Public Relations Review, 43, 123-129.
    • 自己が持つ価値観やアイデンティティを脅かす新情報(自分が持つ道徳性やイデオロギーと相容れない事実)はディスカウントされ却下されるということを踏まえ,企業のPR担当者が「人々の価値観の対立」「人々の価値観の個人差」「分断」「文化的戦争」といった問題をどのように扱えば良いかを道徳基盤理論にもとづいて提言するためのレビュー論文。各基盤ごとに対立があるよということを議論。心理学的に目新しい点はないが提言としては興味深い。

 

【パーソナリティと環境関連行動】

  • Brick, C., & Lewis, G. J. (2016). Unearthing the “Green” Personality:Core Traits Predict Environmentally Friendly Behavior. Environment and Behavior, 48, 635-658.
    • アメリカ人345人を対象に、100-item HEXACO personality inventoryと、二酸化炭素排出や温暖化問題・環境問題に対する態度の関連を検討。 開放性、誠実性、外向性が高いほど「環境配慮型パーソナリティ」。自然環境に対する態度が媒介。
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