伊藤言の研究・教育活動について
2019/09/19 by Gen

2019年現在,日本で経験サンプリング法(ESM)を用いた研究をいかに実施するか

[2019/12/10最終更新] (Harvest Your Dataの使用感をレポしました)

【宣伝】

  • 所属するイデアラボを通じてプロのエンジニアの方と経験サンプリング法の研究システム(調査者向けWebインターフェース+参加者向けスマホアプリ)を開発中です。
    • ESMにかけてESpecially Meと名付けています。
    • 現状,参加者向けスマホアプリがAndroidのみの対応となり,動作に不安定さが残るため非公開のα版ですが,数ヶ月中にiOSも対応して一般公開するβ版を完成させるよう動いていますので,よろしければチェックしてください(なお,安定動作が保証できないのでα版の研究利用は非推奨です)  http://esm.life/
    • また,ESpecially Meのブログページの記事も執筆しており記事を増やしていきますので,よろしければあわせてチェックしてください。 http://esm.life/blog
    • アプリは継続的にアップデート予定で,ゆくゆくはスマホのセンサーデータと連動させる機能を実装する予定も開発のロードマップに入っています。ESpecially MeのシステムはAWS (Amazon Web Service) などをフル活用したクラウド構成で,これからの発展性を備えており,個人的にもわくわくしています。
  • 私が主に経験サンプリング法の概念的な解説を,産総研の坂本次郎先生が主に経験サンプリング法から得たデータの統計解析手法について解説し,共著でESMの方法論についての日本語書籍をちとせプレス社より発売予定です(2020年1月出版目処)

 

【本論】

今年(2019年)の日本心理学会に参加して色々な方々とお話ししていて,経験サンプリング法(ESM)に対するニーズは高いものの,実施のハードルは依然高いままであることを実感しました。

(…余談ですが,2019年の日本心理学会では抄録で確認する限りESMを用いた研究が3件しかなかったようです。もっとも,シンポジウムで紹介された研究では,嗜好品がwellbeingに与える影響に関する3,000名規模(×2週間)の研究も報告されていたようですが…)

これまでブログ記事日本心理学会でのシンポジウム日本社会心理学会での方法論セミナーなどを通じて「Paco」というフリーのアプリを推奨してきたのですが,Pacoの開発は事実上ストップに近い形になっており(iOS版のアプリが2017年4月,Android版のアプリが2018年8月の最終更新),使ってみたがエラーが出たなど安定しない挙動に対する不満の声,安定しないので使えないなどの声をしばしば耳にしました。スマホのOSはつねにアップデートされていきますので,ESMシステムの開発のストップやスローダウンはエラーが生じる可能性を高めてしまいます。

そこで現状,どうするのが最良と考えるかについて,以下に改めて整理しておきます。

まず,無料で使える経験サンプリング法のアプリとサービスをサーベイします。(PIEL Surveyというシステムを推します)

その後,有料の経験サンプリング法のアプリとサービスをサーベイします。(Harvest Your Dataというシステムを推します)

PIEL Surveyについては使い方も含めて以下に詳しく解説しました。


#(少なくとも現段階では)無料で使える経験サンプリング法のアプリとサービス

ESpecially Meを利用する(推奨度:★)

⇒現状開発中のアプリです。開発途上のため,Androidのみの対応となり,動作に不安定さが残るため非公開のα版で,現時点では推奨できませんが,数ヶ月以内にiOSも対応して一般公開するβ版を完成させる見込みですので,何卒ご期待ください。ESM研究者の視点から見て,痒いところに手が届くアプリを開発できるよう動いています。たとえば,一つの調査プロジェクトの中で,複数の調査票を同時に走らせることができるなど(1日5回のESM+1日1回の日誌法+参加者から自発的に報告されるものを組み合わせたESMなど)。また,統計処理がしやすい形でデータを吐き出すなど。さらに,調査者が参加者のEmailアドレス等の個人情報を一切取得しなくてもIDとして匿名化した上でデータを取れるようにするなど(※アカデミア以外でESMを利用する際には,この点は特に重要かと思います)。現状「このような機能を持ったESMシステム/アプリが欲しい」というリクエストも受け付けています。

 

Pacoを利用する(推奨度:★★)

⇒私が研究に利用している範囲内ではおかしな挙動はまだ許容内に収まっていますが,開発がストップし開発者のモチベーションが下がっていると強く推察されること,また利用を試みた方々の不満の声があるということで何かと問題も多いと考えられます。エンジニアの方にコードを確認してもらったところ「レガシーだ(古い)」というコメントもいただきました。現時点ではPacoの利用はベストオプションではないでしょう。シグナル関連のバグと対策は特定済みのようですが,アプリのアップデート停止(iOS版は2017,Androidは2018)に伴う動作自体の不具合(例:アプリが落ちる)が増えてきているようです。もしPacoを利用するならば,かならず小規模なプレテストを実施し,行う研究にとって問題なく動作することを,結果のデータをエキスポートして精査した上で確認してご利用ください。

 

PIEL Surveyを利用する(推奨度:★★★★)

⇒かつてはiOS版のみだったので推奨しなかったのですが,いつの間にかiOS, Android両対応になっていました。おそらく2018年から2019年にかけてAndroidに対応したものと推察されます。開発が継続されており(iOS版のアプリとAndroid版のアプリがともに2019年8月の最終更新),iOSおよびAndroidのアプリストアのユーザーレビューを見ていても(そして私が試した範囲でも),安定動作に定評があるようです。スマホのネイティブアプリを利用してESMを実施したい方には現時点ではPIEL Surveyはオススメできるかと思います。なお,アプリを利用してESMを実施すると,インターネット回線が不安定な場所でも安定してデータが取れる,ユーザーが回答する際に(メールを開いてリンクをクリックする等が不要なので)手間が少ない,シグナルから回答までの時間をコントロールしやすいなどの利点があります。

PIEL SurveyはPacoとはかなり異なった特徴を持つので,以下に概要と使い方のイロハをまとめておきます。

  • 【特徴1:Web上で調査票を設計しない】大雑把にいえば,Pacoも,現在開発中のESpecially Meも,基本的にはGoogleフォームのように,調査者がウェブ上のサーバーのGUI(グラフィックユーザーインタフェース)を通じてESMの調査票を設計し,その調査票が調査参加者のスマホのアプリに自動的にセッティングされることによってアプリ上で動作する仕組みになっています。他方,PIEL Surveyでは,調査者はコントロールファイルと呼ばれる調査票を制御するプログラムをパソコンのローカル上(例:Windowsのメモ帳アプリなど)で書き,それを調査参加者に何らかの方法で配布します。たとえば,メールでそのファイルを送信したり,Web上からダウンロードできるようにするなどします。調査参加者は,iOSかAndroid,それぞれ自分のスマホに対応したPiel Surveyのアプリをダウンロードした上で,その受け取ったコントロールファイルをアプリにセットします。すると,調査が開始されます。
    • 良い点:Web上で調査票を設計しないので動作が安定している
    • 悪い点:コントロールファイル(調査票)を調査参加者に配布した上でセッティングさせる際に調査者に説明する・フォローする手間が発生する。また,GUIではなくCUI(調査者はコマンドを直接書くことによって調査票を制御する必要がある)なので,抵抗がある調査者がいるかもしれない。(もっとも,とても簡単なプログラミングです)

 

  • 【特徴2:調査参加者の回答データがWebサーバー上に記録されない】大雑把にいえば,Pacoも,現在開発中のESpecially Meも,基本的にはGoogleフォームのように,調査参加者の回答データはシステムのWebサーバー上に自動的に蓄積されていきます。他方,PIEL Surveyでは,回答データは参加者のスマホに入っているPIEL Surveyのアプリ内に蓄積された後,調査終了時にデータを調査者にEmail送信するよう促す画面が調査参加者のスマホにあらわれ,数クリックで蓄積されたデータが.csvファイルとしてあらかじめコントロールファイル(調査票)に登録された調査者のEmailアドレス宛に添付ファイルとして送信されるようになっています。
    • 良い点:記録されたデータをWeb上のサーバーに随時送信しないので,全体的に動作が安定しており,また調査参加者がスマホをインターネットに接続していない状況でも安定して動作する。
    • 悪い点:回答データがWebサーバーに蓄積されないので,調査参加者がスマートフォンを紛失した場合や,調査参加者と途中で連絡がつかなくなった場合はデータロスとなる。また,調査期間中にリアルタイムで各調査参加者の回答状況(回答率)などを把握することができない。

 

  • 【特徴3:質問形式は限定されておりシンプル】PIEL Surveyが対応する質問形式は,a. 複数の選択肢の中から一つを選ぶよう求める選択式の設問,b. 複数の選択肢の中から場合によっては複数を選ぶよう求めるチェックボックス式の設問,c. 左端と右端のラベルの名前をそれぞれ指定した上で,スライダーを左端から右端のうちのどこかに動かすよう求めるVAS(Visual Analogue Scale)式の設問,d. 自由記述の4つだけです。たとえば,7件法のようなスケール型の質問形式には対応していません。また,画像を挿入することもできません。ただし,条件分岐等には対応しています。1つの画面には1つの質問だけが大きく表示されるというシンプル設計です。
    • 良い点:重要な質問形式はおおむね対応している。シンプルであるがゆえに,選択肢がボタンのように大きく表示され,回答者は回答しやすい感じがする。
    • 悪い点:対応する質問形式以外の質問形式を使った研究を実施したいならばNG。せめてリッカート法(例:7件法など)のスケールには対応して欲しかったか。

 

  • たとえば次のようなコントロールファイルを書いてやることで,次のようなESMの画面が表示されます。コントロールファイルの書き方は実に簡単なもので,以下の内容で,ほとんどの機能を解説できたのではないかと思います。好きなテキストエディタ(メモ帳など)を開いて,次の内容を貼り付けるだけです。拡張子は.surveyにすること,また文字のエンコーディングはUnicodeのUTF-8にすることを忘れないでください。よくわからない人は.survey拡張子のサンプルファイルをこちらからダウンロードした上でいじってみてください(マウスの右クリック⇒ファイルを保存,でここから.surveyファイルを直ダウンロードしてもOKです)。なお,同一行の#以下はコメントアウト部分なので実際の動作には影響しません。
  • —ここからコントロールファイル—

#◆以下は基本的な設定

name|ESMの動作確認サンプル(任意回答可能版)

#調査のタイトルを入力する(オプション・なくてもOK)。

author|伊藤 言(イデアラボ)
#調査する主体の名前を入力する(オプション・なくてもOK)。

author-email|m@genito.net
#回答データの収集先となるメールアドレスを入力する(必須・ここに参加者の回答データが送付される)。

subject-id|
#参加者IDを入力する(オプション・もし何も記入しなかった場合は,参加者が自身で(ポップアップ画面を通じて)参加者IDを打ち込むことになる 空白のまま記録される)。

 

 
#◆以下はスケジュールに関する設定

start-date|27/09/2019
#ESMの開始日時をdd/mm/yyの形式で入力する(オプション・もし何も入力しなかった場合は即時スタート?ここに入力された日時より遅い時点で参加者が調査に参加しようとするとエラーが生じるので注意する。

can-run-once|1
#一度だけ測定する場合は1,スケジュールに従って反復測定するの場合は0を入力する(オプション・もし何も入力しなかった場合は1度だけ測定する設定になる。1度だけ測定するモードでは,参加者が任意のタイミングで調査に何度も回答できる)。今回はデモなので,任意のタイミングで回答できるように1に設定しています。

max-delay|180
#シグナルが出てから(スマホに通知があらわれてから)参加者が回答を開始するまでのデュレーション(期間)を秒数で指定する。180なら3分で打ち切るということ。これを設定した場合は参加者に用意周到に事前説明する必要がある(オプション・なくてもOK)。

 
max-duration|600
#参加者が回答を開始しはじめてから回答を終えるまでのデュレーション(期間)を秒数で指定する。600なら10分で打ち切るということ。これを設定した場合は参加者に用意周到に事前説明する必要がある(オプション・なくてもOK)。

 

run|7|1915,1920,1925

run|1|0900-1200,1500,1700-1900

run|2,3,4|1300-1600

run|5,6|0900-0930,0930-1000,1000-1030,1030-1100,1100-1130,1130-1200,1200-1230,1230-1300,1300-1330,1330-1400,1400-1430,1430-1500,1500-1530,1530-1600,1600-1630,16300-1700,1700-1730,1730-1800,1800-1830,1830-1900,1900-1930,1930-2000,2000-2030,2030-2100,2100-2130,2130-2200,2200-2230,2230-2300,2300-2330

#runでシグナルを出すスケジュールを指定する。run|曜日|時刻の形式で指定する。出す曜日は1=月曜~7=日曜までの数字で指定する。たとえば日曜だけに出す場合はrun|7|,火・水・木に出す場合はrun|2,3,4|。アスタリスクマークを使うと「すべての曜日」の意味になる(run|*|)。#時刻は曜日の後に4桁の数字で指定する。たとえば毎日午後3時30分に出したいならrun|*|1530。

#曜日によってスケジュールを変えたい場合は,改行して複数指定を行う。たとえばrun|1|1915,1920,1925とrun|2|2000,2015,2030と入力した場合は,月曜は19:15,19:20,19:25に,火曜は20:00,20:15,20:30にシグナルが出現する。

#固定ではなくランダムな時刻にシグナルを出したい場合は,時間帯で指定する。たとえばrun|*|0900-1200,1200-1500,1500-1800,1800-2100であれば,9時~12時の間のランダムな時刻に1回,12時~15時の間のランダムな時刻に1回,15時~18時の間のランダムな時刻に1回,18時~21時の間のランダムな時刻に1回シグナルが出現する。

#これは固定スケジュールと組み合わせることもできる。たとえば,run|*|0900-1200,1500,1700-1900であれば,9時~12時の間のランダムな時刻に1回,15時に1回,17時~19時の間のランダムな時刻に1回シグナルが出現する。

#2つのシグナルが近接しすぎることを防ぐには,時間帯のブロックを離す指定をする。たとえば,次のように表記すれば,2つの任意のシグナルの間隔は最低1時間開くことになる。run|*|0900-1000,1100-1200,1300-1400

 

run-for|300
#これによって開始してから調査を何日間続けるかを指定する。たとえば7であれば7日間調査が続く指定になる。300ならば300日間。

 

 
#◆以下は調査の挙動に関する設定

can-test|1
#動作確認のテストを出来る状態にするかを指定する(必須)。1は可能,0は不可能。これが1に設定されている場合,テストボタンを押してから10秒以内に通知があらわれる。実際の調査の際には0に指定することが推奨される。

exit-message|3|今回の調査へのご協力、ありがとうございました!!
#毎回のアンケートに答え終えた際に表示されるメッセージと表示する秒数を指定する。この場合,「今回の調査へのご協力、ありがとうございました!!」というメッセージが3秒間表示される。exit-message|秒数|メッセージ内容#なお,複数のメッセージの中から毎回ランダムにメッセージを表示させることも可能。たとえば,以下のように表記すれば,これら3つのメッセージの中からランダムに選ばれた一つが毎回3秒表示される。

exit-message|3|今回の調査へのご協力、感謝です!!
exit-message|3|その調子です!!
exit-message|3|引き続きよろしくお願いします!!

placeholder-message|現在は質問はありません。わざわざご確認ありがとうございます。
#調査回答時以外にアプリを開いた場合の待機メッセージの内容を指定する。placeholder-message|メッセージ内容。オプションであり指定しないことも可能(その場合は何も表示されない)。

alert-sound|5
#通知音を指定する。alert-sound|通知音名。オプションであり,指定しない場合は,ユーザーのスマホのデフォルトの通知音が鳴る。指定できる音は8つある。https://pielsurvey.org/instructions/survey-information/で8つの音を聞くことができる。かなりエッジが立った効果音で素敵。笑

 

#◆以下は調査で表示する質問の内容についての設定
1|あなたは今一人ですか?|はい|いいえ
2|あなたは今どこにいますか?|自宅|学校・職場 %NEXT 3|その他
3|あなたが30分以内に交流した相手をすべて選んでください。 %TYPE checkbox|家族・親族|友人|恋人|仕事関係|その他
4|今の気分は? %TYPE slider|とてもネガティブ|とてもポジティブ
5|朝の気分は? %TYPE slider %OPTIONS left|とてもネガティブ|とてもポジティブ
6|現在の気持ちをひとことで表すと? %TYPE text
7|あなたの今日のおおよその摂取カロリー(kcal)は? %TYPE text %OPTIONS number
8|今日はどれくらい良い日でしたか? %HINT あまり考え込まずにぱっとお答えください。 %TYPE slider|とてもネガティブ|とてもポジティブ
9|明日はどれくらい良い日になりそうですか? %HINT %TYPE slider|とてもネガティブ|とてもポジティブ

 

#基本的に,以下のような形式で表記する。質問番号|質問文|選択肢a|選択肢b|選択肢c。質問形式としては,リスト型(一つだけ選択可能),チェックボックス型(複数選択可),スライダー型(たとえば0から100までなど左端から右端までスライダーを動かすVAS [Visual Analogue Scale]),自由記述型の4つがある。また,質問文だけではなく,質問文に対する補足説明を表示したり,条件分岐を指定することもできる。条件分岐を指定できるのはリスト型の質問だけである点に注意。以下,細かく説明する。

#リスト型。質問番号|質問文|選択肢a|選択肢b で指定する。たとえば一つ目の質問ならば 1|あなたは今一人ですかか?|はい|いいえ

#リスト型で条件分岐を行いたい場合(たとえば選択肢bを選んだ人だけを質問6に飛ばしたい場合)は,次の通り指定する。質問番号|質問文|選択肢a|選択肢b %NEXT 6|選択肢c。たとえば,2|あなたは今どこにいますか?|自宅|学校・職場 %NEXT 3|その他 ならば「学校・職場」という選択肢を選んだ人だけが質問3に回答することになる。なお,%NEXT ENDで終了も指定できる。たとえば,2|あなたは今どこにいますか?|自宅|学校・職場 %NEXT END|その他 ならば「学校・職場」という選択肢を選んだ人だけがアンケートへの回答が終了となる。条件分岐の注意点として,分岐元はリスト型の質問に限定される。しかし,分岐先はすべての質問形式が可能である。

#リスト型の質問は,質問のタイプを指定する必要はないが,その他のタイプの質問は質問文の末尾に%TYPE 質問タイプ名を付け加えて指定する。#チェックボックス型であれば 質問番号|質問文 %TYPE checkbox|選択肢a|選択肢b|選択肢c という形式で指定する。たとえば, 3|あなたが30分以内に交流した相手をすべて選んでください。 %TYPE checkbox|家族・親族|友人|恋人|仕事関係|その他

#スライダー型(左端から右端までスライダーを動かすVAS [Visual Analogue Scale])の質問であれば,質問番号|質問文 %TYPE slider|左端の極の表現|右端の極の表現 という形式で指定する。たとえば, 4|今の気分は? %TYPE slider|とてもネガティブ|とてもポジティブ。なお,デフォルトではスライダーの位置が真ん中にセットされているが,左端や右端をデフォルトの位置に変更することもできる。%OPTIONS leftもしくは%OPTIONS rightを使う。たとえば,左端の位置にスライダーをセットしたいならば, 5|今日のこれからの予定は? %TYPE slider %OPTIONS left|とても暇|とても忙しい 参加者がまったくスライダーをタップしたり動かさない場合は無回答とみなされ次に進めないので,そのことは注意事項として伝えた方が良いかもしれない。

#自由記述型の質問であれば,質問番号|質問文 %TYPE textで指定する。たとえば, 6|現在の気持ちをひとことで表すと? %TYPE text 。なお,回答欄をタップしたときに,スマホのどのようなキーボードが立ち上がるかを指定することもできる。%OPTIONS normalは通常のキーボード入力,%OPTIONS numberは数字入力,%OPTIONS decimalは小数点入力,%OPTIONS emailはEmail形式,%OPTIONS urlはURL入力,%OPTIONS phoneは電話番号の入力に適している。たとえば,7|あなたの今日のおおよその摂取カロリー(kcal)は? %TYPE text %OPTIONS number

#注意すべきこととして,質問文に対する補足説明(hint)を指定しないと,あらかじめプログラムされたデフォルトの補足説明が表示されてしまう。たとえば,リスト型であれば英語で“Choose one option below”が表示される。チェックボックス型であれば英語で“Choose one or more options below”が表示される。そこで,質問文に対する補足説明(hint)を日本語で指定した方が良いだろう。補足説明は質問文の後に %HINT で指定する。たとえば,8|今日はどれくらい良い日でしたか? %HINT あまり考え込まずにぱっとお答えください。 %TYPE slider|とてもネガティブ|とてもポジティブ なお,%HINTの後に何も中身を指定しなければ,補足説明はなしになる(デフォルトのものも表示されなくなる)。たとえば,9|明日はどれくらい良い日になりそうですか? %HINT %TYPE slider|とてもネガティブ|とてもポジティブ

 

 
#◆その他の注意事項

#質問は1ページに一つだけ,質問番号の順番に表示されます。
#条件分岐先の質問番号は,条件分岐元の質問番号より大きい必要があります。もし複雑な条件分岐を作りたいならば,同じ質問を何度も繰り返すことを検討してみましょう。
#条件分岐がエラーなくきちっと組み立てられていることを確認しましょう。
#スケジュール通りに動作するか確認しようとcan-run-once|0に設定したとき,もう過ぎている時間が設定されているとエラーが生じます。たとえば木曜の午後6時に動作確認しようとして,調査票の開始日をその日にした上で,木曜の18時以前にシグナルを出現させるよう設定されているとエラーが生じます。気をつけましょう。
#スケジュールに従ってシグナルを出すよう設定しているとき(can-run-once|0に設定したとき),次のシグナルが何時に出現するか予告が表示されるようです。この予告はどうやら消せなさそうです。


  • —ここまでコントロールファイル—

 

 

  • PIEL Surveyを自分で試してみる方法について
    • まず,iOS版のPIEL Survey, もしくはAndroid版のPIEL Surveyをスマートフォンにダウンロードします。
    • 上記の.surveyファイル(Dropboxから.surveyファイルをダウンロードするGoogle Driveから.surveyファイルダウンロードする)をダウンロードします。iOS, Dropboxの場合で説明しましょう。ダウンロードリンクをクリックしてください。
    • ダウンロードした.surveyファイルをPIEL surveyのアプリで開いてください。たとえば,Dropboxのアプリがインストールされているなら,下記のような画面になるはずなので,アプリ右上の「…」マークをクリックしてください。
    • 次に下の写真のように「エクスポート」をクリックしてください。
    • 次に「別のアプリで開く」を選択してください。
    • 候補を上にスクロールしていくとどこかに「PIEL Surveyにコピー」という項目があるはずです。それをクリックしてください。
    • 次の「Survey Imported」(質問票が入りました)という表示が出たら成功です。
    • OKを押し,次の画面のように「ESM動作確認サンプル(任意回答可能可)」という部分をタップして,画面一番下の「Start Once Survey」(一度だけの調査に参加する)をクリックしてください。
    • すると,次のようにESMの回答画面があらわれます。回答しないと(スライダーの場合はタップ or 動かさないと)次の画面に進めないので注意してください。
    • 回答がすべて終わると次のような画面があらわれます。そうしたら,「End Survey」をクリックしてください。
    • ここで,下のように「Survey Saved」(調査への回答が記録された)という表示が出てきます。回答データをすぐに送信するかあとでまとめて送信するかを尋ねられるので,「OK」を押してすぐに送信しみてましょう。
    • OKを押すと,下のようにメーラーが立ち上がるはずです。宛先はコントロールファイルにデフォルトとして指定した私のEmailアドレス(m@genito.net)になっていますので,これを,ご自身のアドレスに変更した上でEmailを送信すれば,ご自身のアドレスに回答データが到着します。(※なお,ESMの調査が出現するシグナルのタイミング(スケジュール)を組んだ場合は,回答データを送信するよう求める画面は毎回あらわれません。あくまで調査の最後にあらわれます)
    • Emailで受信した回答データをパソコンで開いてみましょう。残念ながら,.csvファイルをただクリックしてExcelなどでいきなり開くと日本語が文字化けします。csvファイルの文字化けに対処する通常の手順にしたがって,かならず文字のエンコードを直してください。たとえばWindowsであれば,下記のように.csvファイルを変更してください。
    • まず,ダウンロードした.csvファイルを右クリックして,「プログラムから開く」で「メモ帳」アプリを選んでください。
    • 次に,メモ帳で.csvファイルを開いたら,左上の「ファイル」⇒「名前を付けて保存」で「すべてのファイル」を選択して文字コードを「ANSI」にしてください。
    • そうすれば,次のような文字化けしていないデータを得ることができます。
    • あとは,実際にESMを実施する際には,全員のESMの回答データ(1人の参加者ごとに1つのファイルとして吐き出されたデータ)を1枚のシートにまとめるローデータ成形の手間はありますね。さらに,ESMでよく用いられるマルチレベル分析に必要な縦持ちデータに変換するには,工夫が必要です。縦持ちデータは,次のようなデータです。
    • 自分オリジナルのESMを作るには,.surveyファイルを,テンプレートの.surveyファイルで解説した内容に従って編集した上で,Email送信/Dropbox/Google Driveなど何らかの形でスマートフォンに送り,スマートフォンのPIEL Surveyでその.surveyファイルを開いてやるだけです。実際に調査を行う際には,ファイルの開き方の説明が結構煩雑になるかもしれません。
  • 最後に,PIEL Surveyの目立つ欠点としては,
    • 回答者は回答した前の質問に戻ることができてしまう。これを防ぐオプションがない
    • 画像の挿入ができない
    • 一つの調査プロジェクトの中に2つ以上の調査票を走らせることができない(例:1日5回ランダムな時刻に出現する調査票と,1日1回夜に出る調査票を混在させられない)
    • 参加者一人一人のデータが一つの.csvとして吐き出され,また縦持ちデータではないので,出力データをローデータ成形するのが大変
    • 回答データが参加者のスマホに蓄積されるので回答状況をリアルタイムに把握できない
    • 対応している質問形式が少ない
    • 一部英語のインターフェースが残る(完全に日本語化できない)
    • 回答データが参加者のスマホに蓄積されるので,回答のロスの不安が残る
    • 参加者のEmailアドレスが調査者にわかってしまうので,調査者は参加者の個人情報を取得するリスクを負ってしまう
  • その他,何か質問があればコメントにどうぞ。

 

 

坂本次郎先生のシステムを利用する(推奨度:★★★)

⇒Google Action Scriptを操作する(スクリプトを記述する)ことでESMを実現させるためのパッケージです。主にコピペで動作するよう配慮されています。ただし,基本的には,ESMの回答部分をGoogleフォームで作成し,指定時刻に,Googleフォームの回答画面へのリンクを含んだEmailが送信される仕組みですので,アプリをワンクリックして回答する場合と比較すればやや参加者の手間は増えるかもしれません。(アプリ型というよりはEmail型のESMです) 利点としては,一つの調査プロジェクトの中で2つ以上の調査票を走らせることができる点が挙げられます。

 


#有料の経験サンプリング法のアプリとサービス

とはいえ,調査にかける予算が潤沢ならば無料のESMサービスにこだわる必要はないわけで,積極的に有料のサービスを検討されると良いと考えます。以下に有料のサービスを比較しましたが,Androidしか対応していないサービスは除外し,iOS, Android両対応のサービスのみ扱いました。

 

  • LifeData
    • 現状有料のESMシステムではもっとも安定感があるサービスか。ただし,料金はそれなりに高額。
    • 参加者の回答データをリアルタイムで美しくグラフ化する機能が充実しており,医療関係者が患者のフォローに使う需要をそれなりに想定している模様。
    • GPSデータ,写真データの取得も可能(非バックグラウンド)。
    • 料金
      • 無料:14日間の試用・参加者数は10人まで
      • Pilot Study(650ドル/月):参加者数は50人まで
      • Short Study(350ドル/月・ただし月ごとの契約は不可で2100ドルで6ヶ月強制契約):参加者数は100人まで
      • Annual(290ドル/月・ただし月ごとの契約は不可で年間契約の3480ドルとなる):参加者数は200人まで
      • ※それぞれのプランにおいて,50人を追加するたびに追加で毎月?200ドルがかかる
  • Mobile EMA (mEMA)
    • スマートフォンのセンサーデータの取得も含めた機能が豊富な高機能型ESMシステムか。動作の安定性は未使用なのでわからない。
    • バックグラウンドで取得可能だとホームページでは説明されているデータとして,GPSデータ,アプリ使用状況のログ,電話ログ,SMSログ,明度センサーのログ,音センサーのログ,温度・湿度・大気圧のログ,Garmin/Empaticaと連動した心拍等計測など。
    • 写真・録音・録画データはESMのアンケート回答時に添付可能。
    • 回答時間の計測がms(ミリ秒)単位で可能。
    • 参加者用に回答結果をリアルタイム表示する機能があるらしい。
    • 料金
      • Basic(6ヶ月2,650ドル,1年3,375ドル)
        • ESMの基本的機能のみ使える。このプランでは使えない機能は,すべての質問への回答の個別タイムスタンプ,スマホのセンサーデータの利用,調査ページへのブランドロゴ追加機能,回答時間の測定機能,Garmin/Empaticaと連動させた生理学的データ測定機能,参加者用の回答結果のリアルタイム表示機能。
      • Professional(6ヶ月4,250ドル,1年7,250ドル)
        • ESMの基本的機能に加えていくつかの機能が使える。このプランでは使えない機能は,(回答時間の測定機能,Garmin/Empaticaと連動させた生理学的データ測定機能,参加者用の回答結果のリアルタイム表示機能。
      • Premium(6ヶ月設定なし,1年14,400ドル)
        • 全機能が使える。
    • 2019/12/10現在確認したところ,料金プランの開示はストップし,利用するためにはスタッフとの英語でのオンラインミーティングが必須になった模様(そこで料金プランを提示されるらしい)。ややハードルが高いか。
  • Harvest your data
    • リーズナブルなESMシステムという印象。基本的なESMの機能はしっかりしている。
    • たとえば下記のような質問形式に対応している。スマホの場合とタブレットの場合で対応する質問形式が異なるのが少しややこしい印象。(タブレットのみグリッド型の質問形式対応可能)
    • GPSデータ,写真データの取得も可能(非バックグラウンド。GPSのシグナル回答時の添付機能はAndroidのみの対応なのがつくづく残念!)。
    • とても使いやすいインターフェース。ダウンロードできるデータの形式も良い(例:写真を一括してZipファイルでダウンロードできる,縦持ちデータで吐き出してくれるなど)
    • iOSアプリの最終更新は2019年9月,Androidは2019年8月なので,低価格のサービスなのに開発が継続されている。
    • 料金
      • 無料
        • 14日間試用・上限100の回答データまで収集可能
      • 有料プラン
        • 1ヶ月・合計3000回答で99ドル,2ヶ月・合計6000回答で198ドル,3ヶ月・合計9000回答で297ドル,6ヶ月・合計18000回答で450ドル,9ヶ月・合計27000回答で555ドル,12ヶ月・合計36000回答で660ドル
        • 有料プランのグレードが上がるごとに,データ収集期間の上限と回答データの上限が伸びる形になっている。たとえば1ヶ月プランでは3000の回答データまでという制限がある(複数質問は同じ質問票で同じ時に回答されれば1回答データとみなすそう)。たとえば100人に1日5回7日間のESMを実施すると,100×5×7=3500回で上限をオーバーしてしまう。
        • 12ヶ月以内に複数のESMを実施する場合はEnterprise Pricingの利用が可能(詳細は問い合わせとのこと)
  • MetricWIRE
    • スマートフォンのセンサーデータと連動させたESMに特化させた高機能なシステム
    • たとえば,GPS情報をバックグラウンドで継続的に自動記録し,GPSのセンサーデータをトリガーとして利用して,特定のESMの質問を起動可能(ある場所に近づいたらある質問を出すことが可能)
    • 料金の詳細は非開示でよくわからない。料金プランについて尋ねるメールを送ったところ,Skypeを通じた英語でのミーティング(「何をしようとしているか教えてくれ」)を要請されるので,少し心理的にハードルが高い。

 

有料のESMシステムを概観しましたが,Harvest your dataの価格的な安さが際立っていますね。たとえば100人に1日5回7日間のシンプルなアンケートだけのESMを実施し,100×5×7=3500回の回答を得たとき,LifeDataは2100ドル,Mobile EMAは2650ドル,Harvest your dataは198ドルとなります。もっとも,たとえ有料の海外のアプリを利用したとしても,一部に英語のインターフェースが残るという問題は残されています。完全日本語ネイティブのESpecially Meにもご期待ください。

 

#番外編:スマートフォンのセンサーデータを取得するmobile sensing的なESMアプリにニューフェースのInsightsAppが登場していますね。iOSはセンサーデータの取得に対する制約が大きいのでAndroidのみの対応のようですが。InsightsAppの解説論文はこちら。

  •   •   •   •   •

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。