伊藤言の研究・教育活動について

Research

 

研究領域(認知心理学・社会心理学)

 

解釈の抽象度(解釈レベル)に応じた認知や社会性の変動メカニズムに関する研究

目の前の変化する環境に柔軟に対応しながら、時に変化する環境から一歩引いて、変化する環境の中で変わらない要素(不変項)を取り出す心の働きに興味を持って研究を進めています。すなわち、ものごとを階層的にまとめあげようとする心の働きにについての研究を行っています。

人は、個別具体的な要素への着目と、複数の個別具体的な要素に共通する要素を取り出す抽象化を往復しながら自らの行動を制御しています。「木を見るか森を見るか」というフレーズは有名ですが、たとえば目の前に「イス」があるとして、そのイスを「茶色の古い長イス」だと具体的に解釈することも、「家具」だと抽象的に解釈することもできるでしょう。また、事物のみならず、人間が行う行為もさまざまな抽象度のレベルで解釈することができます。たとえば、「スカイダイビング」という行為は、「飛行機から飛び降りる」という具体的なレベルでも、「非日常のスリルを楽しむ」という抽象的なレベルでも解釈することができるでしょう。あるいは、自分が「財布を落とし」かつ「遅刻をした」とき、あくまで「財布を落とし」「遅刻し」たと感じるでしょうか?それともそれら2つの行為をまとめて「ダメな自分」だと感じてしまうでしょうか?さらに、「ものごとを階層的にまとめあげようとする心の働き」の社会的な問題系も存在します。たとえば他者が自らに拳を振り下ろしたとき、「殴られた」と感じるでしょうか?それとも「傷つけられた」と感じるでしょうか?それら感じ方の違いによって、自分と他者の関係、 自分と社会の関係は変化するでしょうか?

認知心理学的な側面としては、解釈の抽象度に応じた、知覚的なGlobal/Local処理・カテゴリー認知・記憶における概括化・身体情報が意思決定に影響を与える度合い (embodied cognition) の変化に興味を持ち研究を進めています。社会心理学的な側面としては、解釈の抽象度に応じた、社会的認知(主に対人認知)の変化に興味を持ち研究を進めています。また、「ものごとを階層的にまとめあげる」ことによって維持される政治的価値観(イデオロギー)やmoralityの性質についての研究も行っています。今後は、「ものごとを階層的にまとめあげる」心の性質についての進化的視点からの研究(動物における「般化」と人間における「抽象化」の異同についての研究)、ないし「ものごとを階層的にまとめあげる」心の性質と社会のダイナミクス(個人-集団間関係・集団間関係)の変動についても研究したいと考えています。

※私は実験心理学的観点から研究を行っていますが、臨床的観点、あるいは経営学やマーケティング・リサーチの分野で消費者行動について解釈レベル理論的観点から研究を行っているなどして、共同研究を希望される方がもしいらっしゃいましたら、ご連絡をお待ちしています

 

具体的には、現在、次の研究を進めています。

 

1.解釈の抽象度(解釈レベル)に応じた対人認知の変動メカニズムに関する実験的研究

解釈の抽象度に応じた対人認知の変動メカニズムを重点的に研究しています。これまでは他者に対する共感や利他的行動を促進/阻害する要因を探る研究を行ってきました。現在は、他者に対して距離を取る戦略(DV; Domestic Violenceの抑止)を促進/阻害する要因についても研究を行っています。解釈の抽象度(解釈レベル)という切り口を通して、人が意識的に他者理解の方法を調整し、他者理解をコントロールしようと試みる際に役立つ知見を提供することを目的として研究を進めています。

 

2.解釈の抽象度(解釈レベル)と心理的距離の認知の関係についての実験的研究

解釈の抽象度に応じた、心理的距離(空間的距離・時間的距離・対人的距離・確率)の認知の変化について研究を行っています。

 

3.解釈の抽象度(解釈レベル)に応じた道徳認知や量刑判断の変化に関する実験的研究

解釈の抽象度に応じた、道徳判断の変化について研究を行っています。

 

4.政治的価値観 (ideology) についての心理学的研究

人がなぜリベラル(左)と保守(右)に分かれるかを解明する手がかりを得るための心理学的研究を行っています。

 

5.消費者行動に関する心理学的研究

人が購買行動に至る認知的・感情的プロセスを対象に,心理学的知見を応用しながら,さまざまな官公庁や企業と共同で研究を行っています。

 

6.死や地震の認知が意思決定・行動・価値観に与える影響に関する実験的研究

死を認知するとその後の行動や判断が変化することが知られており、存在脅威管理理論(Greenberg, 1992)と呼ばれる理論にもどつく研究が数多くあります。私は、基本的には存在脅威管理理論に懐疑的な立場を取り(すなわち死の認知が他の脅威と比較して特異的であるという仮定、ないし死の認知は内集団防衛に特異的に結びつくという仮定を疑い)、解釈レベルやGlobal/Locall処理の観点を踏まえながら、死、さらには死に関連した集合的な現象である「地震」の認知が意思決定や行動にいかなる影響を与えるかを実験的に検討しています。

 

7.外国語使用に付随する認知・行動の社会的変化についての実験的研究

母語ではなく外国語を使用する際に、人間の認知・行動にいかなる変化が生じるかについて実験的な検討を行っています。外国語を使用すると思考のパフォーマンスが低下するという観点からのアプローチではなく、外国語使用に伴い認知的表象がより抽象的になり意思決定や行動に変化が生じるという観点からアプローチを行っています。

 

8.美的判断・感性・創造性に関する実験心理学的研究

人はなぜあるものを「美しい」と感じるのでしょうか。人の「感性」をどのように科学的に捉えることができるのでしょうか。人はどのようなときに「創造的」になるのでしょうか。認知心理学と社会心理学を統合したアプローチを用いながら、共同研究者とこれらの点について検討を行っています。

 

    共同研究を希望される方がもしいらっしゃいましたら、 m [at] genito.net ([at]は@に変換してください)までお気軽にご連絡ください。

 

 

■Publications & Presentations [in English]

高野陽太郎・伊藤言  (2016). 16世紀に渡来した宣教師は日本人を“集団主義的”と評したか? 心理学研究, 86(6), 584-588.

 

 

◆学会発表(シンポジウム・ワークショップ)

國里愛彦 (企画)・伊藤言・坂本次郎・竹林由武(話題提供)・小森政嗣 (指定討論) ・ 國里愛彦 (司会) (2017, 9月). 明日からできる経験サンプリング法 ‒効率的なデータ収集と洗練した解析で移ろう心を描き出す‒.  日本心理学会第81回大会シンポジウム, 久留米.(久留米シティプラザ)

相馬敏彦・杉山詔二 (企画)・伊藤言・古村健太郎・相馬敏彦(話題提供)・西田公昭・島田貴仁(指定討論)・杉山詔二(司会) (2017, 9月). DVをどう防ぐことができるか-リスク因子の解明と変容に向けて.  日本心理学会第81回大会シンポジウム, 久留米.(久留米シティプラザ)

若田忠之・正田悠・伊藤言 (企画)・門地里絵・三浦久美子・中野詩織 (話題提供) ・若田忠之 (指定討論) ・正田悠・伊藤言(司会)(2014, 9月). 感性の統合的理解に向けて:におい・香り研究からのアプローチ.  日本心理学会第78回大会シンポジウム, 京都.(同志社大学)

正田悠・若田忠之・伊藤言 (企画)・正田悠・安田晶子・田部井賢一 (話題提供) ・吉野巌 (指定討論) ・若田忠之(司会)(2013, 9月). 感性の統合的理解に向けて:音楽と感情. 日本心理学会第77回大会シンポジウム, 札幌.(札幌コンベンションセンター)

牧野暁世・若田忠之・正田悠・筒井亜湖 (企画)・石黒千晶・くまたにたかし・近藤恵三子 (話題提供) ・伊藤言 (指定討論) (2012, 9月). 感性の統合的理解に向けて:若手心理学者と制作者からの提言. 日本心理学会第76回大会ワークショップ, 東京.(専修大学)

 

◆学会発表(査読あり国際学会)

Souma, T., & Ito, G. (2017). Does “believing in fate” overlook the dangerous behavior of a lover? Poster presented at the 12th biennial conference of the Asian Association of Social Psychology, Auckland, New Zealand.

Ito, G., Hashimoto, Y., Nakagawa, T., & Takano, Y. (2016, July). Psychological antecedents of political ideology in Japan. Paper (oral presentation) at the 23rd Congress of the International Association for Cross-Cultural Psychology (IACCP2016), Nagoya, Aichi, Japan.

Ito, G., & Souma, T. (2016, July). Notice early warning signs of domestic violence by thinking abstractly (vs. concretely): an experience sampling study. Poster to be presented at the 31th International Congress of Psychology (ICP2016), Yokohama, Kanagawa, Japan.

Ito, G., Era, A., & Takano, Y. (2016, January). Construal level, power, and person perception in everyday life: An experience sampling study. Poster presented at the 17th annual meeting of the Society for Personality and Social Psychology (SPSP), San Diego, California, USA.

Ito, G., Imai, R., & Takano, Y. (2015, February). Primed global to feel psychological distance closer: The distinct effects of Navon-induced processing bias on construal level and psychological distance estimation. Poster presented at the 16th annual meeting of the Society for Personality and Social Psychology (SPSP), Long Beach, California, USA.

Ito, G., Tenma, S., & Takano, Y. (2014, February). “Why” for the self, “How” for the others: Construal level and empathy revisited. Poster presented at the 15th annual meeting of the Society for Personality and Social Psychology (SPSP), Austin, Texas, USA.

Ito, G., & Takano, Y. (2013, January). Construal level and mortality salience. Poster presented at the 14th annual meeting of the Society for Personality and Social Psychology (SPSP), New Orleans, LA, USA.

 

◆学会発表(国内学会)

相馬敏彦・伊藤言 (2017, 10月). 相手からのネガティブな行為がポジティブにみえるとき1) – 親密な関係におけるコミットメント・デバイスとしての行為解釈-. 日本社会心理学会第58回大会シンポジウム, 広島.(広島大学,口頭発表)  [paper].

伊藤言・橋本侑樹・中川武治・高野陽太郎 (2017, 10月). なぜあなたと私は政治的態度が異なるのか?―5つの道徳基盤から特定のトピックに対する日本人の政治的態度を予測する 日本グループ・ダイナミックス学会第64回大会, 東京. (東京大学, 口頭発表) ※大会優秀発表賞(ロング・スピーチ部門)受賞  [paper].

鈴木啓太・伊藤言 (2017, 10月). Context Collapseに対する気遣い・葛藤 日本グループ・ダイナミックス学会第64回大会, 東京. (東京大学, ポスター発表)

伊藤言・高野陽太郎 (2017, 9月). ファンは「神」を信仰しているか?ファン心理の構造とその心理学的基盤. 日本心理学会第81回大会, 久留米.(久留米シティプラザ,ポスター発表)  [paper].

伊藤言・江良聡浩・高野陽太郎 (2015, 10月). 日常において心理的距離は行為解釈の抽象度や対人認知に影響しているか? 日本社会心理学会第56回大会, 東京. (東京女子大学, 口頭発表)  [paper].

新岡陽光・榎本かおり・喜入暁・伊藤言・越智啓太 (2015, 10月). 犯罪被害者の行為のとらえ方が責任帰属や共感に及ぼす影響.  日本社会心理学会第56回大会, 東京. (東京女子大学, 口頭発表).

伊藤言・高野陽太郎 (2015, 9月). なぜ人は政治的に左と右に分かれるのか?―抑制機能と道徳基盤の政治的イデオロギーに対する影響. 日本心理学会第79回大会, 名古屋.(名古屋国際会議場, ポスター発表)[paper]

伊藤言・柴田健史・高野陽太郎 (2014, 9月). 外国語で情報を呈示すると大量の情報処理が必要な意思決定の質が向上する. 日本心理学会第78回大会, 京都.(同志社大学, ポスター発表)

伊藤言・高野陽太郎 (2014, 9月). 「道徳的偽善」は他者の道徳的逸脱に対する判断に転移するか?―解釈の抽象度に応じた道徳認知の変動. 日本グループ・ダイナミックス学会第61回大会, 東京. (東洋大学, 口頭発表)

伊藤言・田中良幸・高野陽太郎 (2014, 7月). 抽象的解釈は利他的行動を促進するか?―囚人のジレンマゲームを通じた検討. 日本社会心理学会第55回大会, 札幌. (北海道大学, 口頭発表)

伊藤言・高野陽太郎 (2013, 9月).  地震の顕現化と死の顕現化に随伴する補償行動:内集団防衛とおもしろさ認知のおもてうら. 日本心理学会第77回大会, 札幌.(札幌コンベンションセンター, ポスター発表)

篠原優・高野陽太郎・伊藤言 (2013, 9月).  基準率錯誤におけるヒントとフィードバックの影響. 日本心理学会第77回大会, 札幌.(札幌コンベンションセンター, ポスター発表)

Ito, G., Tenma, S., & Takano, Y. (2013, July). “Why” reasoning vs. “How” reasoning, which fosters empathy? The differentiation of imagine-self and imagine-other. English oral presentation at the 60th annual meeting of the Japanese Group Dynamics Association (JGDA), Sapporo, Hokkaido (Hokusei Gakuen University). ※大会優秀発表賞(English Session部門)受賞

伊藤言・篠原優・高野陽太郎 (2012, 11月).  解釈レベルと共感性(社会的距離)―自他の区分. 日本社会心理学会第53回大会, 筑波. (つくば国際会議場, ポスター発表)

篠原優・伊藤言・高野陽太郎 (2012, 11月). パーソナリティ特性と欺瞞の意思決定の関係. 日本社会心理学会第53回大会, 筑波. (つくば国際会議場, ポスター発表)

伊藤言・高野陽太郎 (2012, 9月). 死の脅威とその管理―解釈レベルの観点からの検討. 日本グループ・ダイナミックス学会第59回大会, 京都. (京都大学, ポスター発表)

伊藤言・高野陽太郎・篠原優 (2012, 9月). 死の脅威(存在脅威)の管理に解釈レベルが与える影響. 日本心理学会第76回大会, 川崎. (専修大学, ポスター発表)

篠原優・高野陽太郎・伊藤言 (2012, 9月). 集団で嘘をつく規範が凝集性に及ぼす影響. 日本心理学会第76回大会, 川崎. (専修大学, ポスター発表)

 

◆その他

伊藤言・江良聡浩.  (2016, 12月). 抽象的・具体的に自己・他者を解釈することに応じた対人認知の制御方略についての心理学的研究. 東京大学大学院人文社会系研究科心理学研究室大学院研究会, 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言・江良聡浩.  (2015, 11月). わたしたちはいかなるときに自分の行為を抽象的に捉えるか?― 経験サンプリング法による検討. 東京大学大学院人文社会系研究科心理学研究室大学院研究会, 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言 (2015, 3月). 何を解釈する解釈レベルなのか?―「解釈する対象」を踏まえた解釈レベル理論研究の可能性について. 早稲田大学消費者行動研究所 解釈レベル理論研究会, 東京.(早稲田大学, 口頭発表)

伊藤言・中川武治(2014, 12月). なぜ人は政治的に右と左に分かれるのか?―道徳基盤と抑制機能の観点からの研究. 東京大学大学院人文社会系研究科心理学研究室大学院研究会, 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言 (2014, 9月). ラジオNIKKEI第2 Story出演.(9/15-9/19)

伊藤言 (2014, 8月). 解釈の抽象度に応じた対人認知の変動過程の検討. 日本社会心理学会夏合宿セミナー, 東京.(八王子セミナーハウス, 口頭発表)

伊藤言 (2014, 8月).  解釈の抽象度に応じた他者理解(対人認知)の変化. Culture Development and Evolution研究会 (CDE研), 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言 (2014, 7月).  なぜ「ウヨ」と「サヨ」は相容れないのか?― 政治的イデオロギー研究におけるMoral Foundation Theoryの日本での適用可能性についての予備的検討. 日本社会心理学会第55回大会インフォーマルポスター発表. (北海道大学, ポスター発表)

伊藤言・天馬少京・高野陽太郎 (2013, 10月).  解釈の抽象度に応じた対人認知の変動メカニズム. 日本パーソナリティ心理学会 Young Psychologist Program 2013, 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言 (2013, 9月).  死の脅威を異質な他者の受容に結びつけるための研究―注意の焦点の観点から. サントリー文化財団, 東京.(如水会館, 口頭発表)

伊藤言 (2013, 7月).  抽象的/具体的解釈と対人認知. 東京大学大学院人文社会系研究科心理学研究室大学院研究会, 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言 (2012, 10月).  死の脅威とその管理:Global/Local処理と、地震の顕現性、尖閣諸島問題の観点から. 東京大学大学院人文社会系研究科心理学研究室大学院研究会, 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言 (2012, 1月).  死の脅威が判断に影響を与える過程の検討―解釈レベル理論に着目して. 東京大学大学院人文社会系研究科心理学研究室大学院研究会, 東京.(東京大学, 口頭発表)

伊藤言 (2010, 12月).  Moral cognitionの実験的検討. 東京大学大学院人文社会系研究科心理学研究室大学院研究会, 東京.(東京大学, 口頭発表)

 

◆報告書・学会誌等

相馬敏彦・杉山詔二・山中多民子・門馬乙魅・伊藤 言 (2016). 若者の DV 被害を予防するプログラムの効果検証―DV 被害の脆弱性モデルを基盤として―

伊藤言 (2014, 9月).  日本社会心理学会会報 203号 夏の合宿セミナー報告

伊藤言 (2014) サントリー文化財団 若手研究者チャレンジ研究助成(2013年度) 研究報告書

 

 

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